株式会社デンソークリエイトご登壇SHLタレントマネジメントウェビナー「人材可視化による継続的な組織変革~デンソーグループのタレントマネジメント取組事例」開催報告
株式会社デンソークリエイトご登壇
SHLタレントマネジメントウェビナー
「人材可視化による継続的な組織変革~デンソーグループのタレントマネジメント取組事例」開催報告
Zoomビデオウェビナー
2022年11月17日(木)16:00~17:30
2022年11月17日、弊社主催のタレントマネジメントウェビナー「人材可視化による継続的な組織変革~デンソーグループのタレントマネジメント取組事例」(Zoomビデオウェビナー)が開催され、当日参加・アーカイブ視聴含め、約130名の人事ご担当者にご参加いただきました。当日は、株式会社デンソークリエイトの加藤様にご登壇いただき、人材可視化と組織変革の具体的な取り組み事例をご共有いただきました。※ 社名・部署名・役職等はウェビナー開催当時のものです。
開催レポート
自動車産業におけるソフトウェアへのニーズの急拡大に対応するため、組織変革に取り組んでいるデンソークリエイト。「高度ソフトウェアエンジニア集団としてグループ・業界をリードする会社」を目指し、数年前にスペシャリスト育成に重点を置いた新人事制度を導入しています。この制度改革の責任者を務めた加藤様にご登壇頂き、アセスメントを活用した人材可視化をキーワードに一連の組織変革の背景や取り組み内容、成果、今後の課題についてお話しいただきました。その後Q&Aシステムを使って視聴者の皆様から寄せられたご質問にご回答いただきました。以下、ご講演の内容の趣旨をご紹介します。
加藤 宏幸 氏
(株式会社デンソークリエイト 取締役)
私はデンソーの人事部門で約20年間、経営企画部門で約10年間勤め、2015年にデンソークリエイトに来ました。経営人事のプロとして「世界経済からトイレのドアまで」をキャッチフレーズに、人事を中心に管理部門全般を見ています。当社は車載ソフトウェア開発の会社です。人とパソコンだけが資産と言える会社ですから、経営戦略イコール人事戦略です。タレントマネジメントの取り組み事例のご説明の前に、その前提となる私の人事としての基本的な考え方をお話しします。
デンソーに入社した当時、人事部の組織は5つの課で構成されるシンプルな組織でしたが、現在は人事企画部と人事部に分かれてタレマネ室ができるなど、人事の機能が大きく拡大しています。しかしその中でも、人事の基本は変わらず「一人一人の従業員の能力を最大限発揮してもらうこと」だと考えています。一方で、人材獲得競争の激化や人材情報収集・分析技術の進歩、そして人事の業務範囲の拡大により人事部員が全ての領域を経験することが難しくなりました。勘やコツ勝負ではなくデータを活用すること、人材可視化ツールを活用することの重要性が高まっています。
人材可視化によって何をするか。必要なタレントづくりです。私はタレマネを「企業の経営戦略を実現することと、従業員に能力を最大限に発揮してもらい幸せを実感してもらうことを両立させるための、「人」づくりに関する全ての取組み」と定義しています。必要なタレントが自然に育つのを待つのではなく、「つくりこんでいく」のです。従業員が持つ能力やスキルなどの情報を重要な経営資源と捉えて、パフォーマンスを最大化することを目指します。
その取り組みの要である人事制度について、基本的な考え方はどの会社でも当てはまると考えており、ポイントが3つあります。1つ目は、人事制度は会社を変え、企業価値を高め、社員を幸せにできる道具ですが、どの企業にも当てはまるような正解はない。当社と親会社のデンソーでも全く異なります。2つ目は、各社ごとの正解は理想と現実の間にある。制度の対象は生身の人間なので、制度を変えたら翌日からコロッと変わることはありません。現実を直視して、試行過程を経て、理解と納得を得ながら変えていくしかないのです。最後に、人事制度は運用が命。皆様にご理解いただけると思いますが、「制度は作ったので後は任せた」では機能しません。人事がしっかりと運用までフォローすることが重要です。
デンソークリエイトの取り組み
自動車業界はソフトウェアニーズが急拡大しており、当社は高度ソフトウェアエンジニア集団としてデンソーグループや業界をリードすることを目指しています。2016年から始まった会社改革プロジェクトの目玉として、人事制度の改革を行いました。長期雇用・育成重視に大きく舵をきり、キャリア複線化やキャリア計画の作成による育成、能力とスキルの両面に基づく評価、年功色を薄めてやる気のある人に報いる処遇、の3つのポイントで制度改革を行いました。
新人事制度では早期(係長レベル)に複線型キャリアパスを設定し、能力要件をコンピテンシーベースで作成して必要な技術をスキル基準としてまとめ、個別のキャリアアップ計画による育成を加えました。また、人事考課制度や報酬制度を作り直し、スペシャリスト認定基準を作り、昇格のアセスメントや異動計画を作り、組織も動的に変えました。
人材データの活用については、日本エス・エイチ・エル社の支援を受け、新制度の導入前に全社員にOPQを実施し初期値を把握しました。そこから優秀者のコンピテンシーを引き出し能力要件に反映させています。新制度導入後も、全社員が2年に一回OPQを受検して、キャリアアップ計画に反映させています。また、昇格候補者にはOPQに加えて360°評価とイントレイのアセスメントを実施し、結果について本人と上司と人事責任者である私の3者でフィードバック面談を行います。1月の組織変更に向けて11月末に候補者全員にフィードバック面談を行っていますが、非常に評判が良く、今では名物行事となっています。
人材情報を可視化する意義は、過去・現在・未来の情報を集約することで、会社の戦略上必要な人材ニーズに対するギャップを把握し、ギャップを埋めるのに育成するのか外部採用するのか等、施策の方向性を検討することができる点です。
これらの取り組みの成果としては、新しい人事制度が定着してきた点があります。また、スペシャリストが約20人誕生し、デンソーグループ内で人事や人材育成の面でお手本になっていると思っています。毎年実施している社員満足度調査においても、活動の結果が表れています。2016年度当時の総合満足度は約50%であり、5年後に70%を目標としてきました。人事施策だけによるものではないとは思いますが、昨年度は71.5%で見事に目標を達成することができました。
現在、新制度を導入して5年が経過しましたので、改めてOPQ分析をしたところ、管理職層の戦略的思考とリーダーシップに課題があることが分かりました。そのため、新しい施策を実施しています。一つは、経営的な視点でもって技術を考えることができる人材ポストとして、スペシャリストコースの最高峰であるエグゼクティブ・エンジニアを新設。もう一つは、次世代リーダーを育成するための選抜型の育成施策。ここではディベロプメントセンターやアセスメントセンターなどの社外の客観的な評価も取り入れています。
デンソーグループの取り組み
次に、デンソーグループとしての取り組みを紹介します。自動車産業は大きな構造変化の中にあり、脱炭素やEV車への移行で、私たちの得意なガソリン・ディーゼルエンジンの環境が無くなってしまうということで、非常に危機的な状況にあります。そこで、自動車部品会社ではなくモビリティカンパニーになる大義を掲げ、「ソフトウェアファースト」を合言葉としています。この戦略の実現のためには高度ソフトウェアエンジニアと人材の柔軟な配置が必要です。そのため、ソフトウェア技術者を育成するところからタレントマネジメントを始めました。「キャリアイノベーションプログラム」と呼ばれる施策です。このプログラムは、能力を客観的に認定し、再教育して、実戦配備により育成し、1対1で個別に指導し、さらに上司以外の専門家がデータに基づいて一人ひとりのキャリア開発を支援できる体制を作っています。
プログラムの中心には、「人材情報DX基盤」があります。上司による属人的なマネジメントから多面的な人材情報とデータ分析によるマネジメントへと移行するための人材可視化の仕組みです。これにより、事業シフトに応じたスピーディーな人材育成や人材の質量把握と横断的な需給の管理、個人の強み弱み、志向等に基づいたキャリア構築と支援、全体最適によるチームパフォーマンスの可視化が可能になります。この人材情報は、人事部門で独占するのではなく、社員・管理者・経営層も閲覧できるようになっています。閲覧可能データはそれぞれ異なります。本人は自己データの棚卸によるキャリア目標とスキル拡充検討に使用するほか、自己アピールを加えることも可能です。管理者層は自分の組織やチームの戦力を分析し、必要な人材をグループ全体から探します。経営層はデータを俯瞰的に見て人材戦略を検討することができます。
人材可視化の他の取り組みとして、パルスサーベイも実施しています。「今の仕事が楽しいか?」「達成感はあるか?」などを定期的に確認しています。結果の変化から要ケアとなった人がいれば、上司などにケアをしてもらいます。テレワークで日常的な部下の様子が見えないので、これも人材可視化の1つと考えています。現在、約5千人の人材情報をデータ化しましたが、活用はまだまだこれからです。デンソークリエイトは様々な試行錯誤を繰り返して完成度を高め、デンソーグループに貢献する雛形を作り、世の中へ発信できたらと考えています。
プログラム
16: 00
開会
16: 05
SHL講演 「人材可視化のための全社員ポテンシャル測定」
清田 茂(日本エス・エイチ・エル株式会社 執行役員)
16: 30
ゲスト講演 「人材可視化による継続的な組織変革~デンソーグループのタレントマネジメント取組事例」
加藤 宏幸 氏(株式会社デンソークリエイト 取締役)
17: 00
質疑応答
17: 30
閉会