【コラム】人事コンサルタントの視点
さまざまなタレントマネジメント課題に関して、
日本エス・エイチ・エルのHRコンサルタントがコラムを執筆しています。
簡単にできるコンピテンシーモデリング~カードソート(行動カード分類法)
コンピテンシーモデリングとは
タレントマネジメントを進める上で適切な人材要件の定義は必要不可欠です。
人材要件を定義するためには、コンピテンシーに基づく職務分析が有効です。職務分析を行うことで、職務遂行に求められる重要な行動が明確になります。
職務に求められる重要な行動をコンピテンシーと呼び、特定の職務や階層、集団に求められる構造的なコンピテンシー群をコンピテンシーモデルと呼びます。職務に求められる複数のコンピテンシーを特定し、重複や抜け漏れのない構造的なコンピテンシーのまとまりを作ることをコンピテンシーモデリングと言います。つまり、コンピテンシーモデリングとは職務分析によってコンピテンシーモデルを作ることです。
職務分析の手法
コンピテンシーモデリングに入っていく前に、職務分析について少し説明します。
職務分析とは、職務要件や人材要件を定義するために行う分析です。手法としては、以下5つが一般的です。
・観察
現職者が仕事をしている様子を観察します。この手法は、被観察者が観察されることを意識すると日常と異なった振る舞いをするかもしれないというリスクがあります。プロセスが観察できるような作業職にのみ有効です。
・インタビュー
現職者やその仕事についてよく知っている人に対してインタビューをします。自由面接や構造化面接、個人やグループなどやり方は様々です。どのような職務に対しても実施できます。
・参加
分析者が実際に仕事を行い、その経験に基づいて分析します。この手法はトレーニングが少なくて済むような非専門的な仕事に限られます。
・自己報告
現職者に行動の日記をつけてもらい、その日記を分析します。現職者が定期的かつ正確に情報を記入するかどうかに左右されます。
・既存情報のレビュー
既に存在する職務記述書などの情報を使用します。職務要件に関して新しい見方をもたらすことはありません。
最も簡便にできるインタビュー手法~カードソート(行動カード分類法)
5つの手法の中でどのような職務にも対応できるものがインタビューです。また、今回は複数あるインタビュー手法のうち、最も簡単に実施できるカードソート(行動カード分類法)をご説明します。
カードソートはコンピテンシーカードを用いて行うインタビューです。コンピテンシーカードには、職務遂行に影響を与える行動(コンピテンシー名とその定義)が記述されています。
インタビュアーはインタビュイーに対して、全てのコンピテンシーカードを分析対象となっている職務の成功に「必要不可欠」、「望ましい」、「あまり関係しない」、「全く関係しない」の4つに分類するよう依頼します。各カードの分類理由をたずね、コンピテンシーがどのように発揮されるか、どのような影響を及ぼすかを確認し、総合的にコンピテンシーモデルを作成します。
コンピテンシーカード
SHLグループは汎用的なコンピテンシーの枠組みであるUCF(ユニバーサル・コンピテンシー・フレームワーク)を持っています。
UCFは既存のコンピテンシーモデルやSHLが開発してきた数百のクライアント独自モデルの調査、様々なこの分野の研究に基づいて開発されました。3階層の構造を持っており、SHLのコンピテンシーカードはこの構造に基づいて設計されています。
・8個のコンピテンシー・ファクター
幅広いコンピテンシー領域を表す8枚のカード。職務パフォーマンスに影響を及ぼす一般的な行動のカテゴリーです。具体的コンピテンシーよりも一般的なコンピテンシーを定義づける際に役立ちます。
・20個のコンピテンシー・ディメンション
8枚のファクター・カードを細分化した20枚のディメンション・カードです。職務の具体的行動を明らかにして優先順位をつける際に用います。ディメンション・カードはUCFの20個のコンピテンシーを表しています。
・96個のコンピテンシー・コンポーネント
20枚のディメンション・カードをさらに詳細に分けたものが、96枚のコンポーネント・カードです。特定職務のパフォーマンスに影響を及ぼす様々な重要行動をより細かく定義することができます。
以下の表は、対人積極性ファクターにおける3階層の関係を表したものです。
カードソートのメリットとデメリット
メリットは、単純で簡潔なため結果が再現しやすいこと、1時間未満の短時間でできること、カードに幅広い行動が網羅されているためインタビュー対象者が自分で行動を述べる必要がなく楽なこと、です。加えて、グループインタビューにも対応しやすく、複数の対象者が職務行動を表現するための共通言語を持つことが容易な点もメリットです。
デメリットはコンピテンシーカードの記述が一般化されていることに起因する問題です。この手法だけでは実際に行われる具体的行動に落とし込むことはできません。カードの言葉が組織で使われている意味と異なっていたり、カードに実際に使われている言葉がなかったりすることがあります。
カードソートによるコンピテンシーモデリングの目的
よく行われるカードソートによるコンピテンシーモデリングには以下の4つがあります。
・組織のコンピテンシーフレームワークを作る
・新しい職務のコンピテンシーモデルを作る
・既存の職務のコンピテンシーモデルを作る
・独自コンピテンシーフレームワーク/モデルの妥当性を確認する
カードソートの手順
目的によってインタビューの対象者や対象になる職務、質問や作業が変わりますが、今回は既存職務のコンピテンシーモデリング手順をご説明します。
インタビューの対象者は、人事担当者、既存職務のラインマネジャーやリーダーなど既存職務の成功に必要な行動について理解している人です。所要時間は1時間~2時間。カードを広げられる大きなテーブルがあるといいでしょう。
続いて手順は以下の通りです。
・準備
インタビューの対象者にインタビューの事前説明文を送っておきます。既存の職務記述書を見直し、必要なコンピテンシーについて検討しておきます。
・インタビューの導入
プロジェクトの目的と概要、インタビューのプロセスと情報管理について説明します。
・職務の重要目的を引き出す
職務の主要な目的、職責、課題について質問し、明確にします。
・カードを選ぶ
20枚のディメンション・カードを重要度で分類します。
・選択理由と具体的な行動を確認する
「必要不可欠」と「望ましい」に分類したカードについて、選択した理由と具体的な行動について確認します。具体的な行動を検討する際にコンポーネント・カードを活用します。行動を取捨選択し、職務に適したコンピテンシーとして要約します。
・情報のまとめ
新しいコンピテンシーモデルを確認し、その職務の仕事のタイプやレベルに合致したコンピテンシーになっているかどうかを検討し、確定します。
終わりに
今回は最も簡単なコンピテンシーモデルの作成方法であるカードソートについてご説明しました。この手法をより詳しく学びたい方はぜひ弊社主催のコンピテンシーデザインコースにご参加ください、と申し上げたいのですが、このコースはお客様のご要望に応じた不定期開催のため、すぐにお申込みいただくことができません。ご興味をお持ちいただけましたら無料のダウンロード資料「コンピテンシーモデリングのためのインタビューのご提案」をご覧ください。
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