【コラム】人事コンサルタントの視点
さまざまなタレントマネジメント課題に関して、
日本エス・エイチ・エルのHRコンサルタントがコラムを執筆しています。
コロナ禍はパーソナリティにどのような影響を与えたか(後編)
コロナ禍のこの2年間、私たちはかつてないほどの心理的な負担を感じてきました。職場での人との交流が難しくなり、仕事は必要なタスクをこなすことばかりとなり、楽しみが減ってしまいました。
このことは働く人の意識に大きな影響を与えています。米国では社員が会社に求めるもの(報酬、評価、経験など)が変わり、大量離職が発生しています。企業はEVP(従業員価値提案)を考えざるを得ない状況に追い込まれました。
コロナ禍が長引けば回復力と適応力はさらに低下する可能性があります。私たちは今すぐにでも社員を癒し、活性化するための対策に乗り出さなければなりません。
癒しと活性化の対策
SHLは社員を癒し活性化する方法として以下の5つを提案しています。
1.リーダーが共感を示す
共感的なリーダーの効用に関する米国の調査では、9割の労働者が仕事の満足度を高めると回答し、8割の労働者が離職率を下げると回答しています。
リーダーの共感は信頼し合う組織風土を構築するための重要な推進力です。しかし、これを実践するリーダーは必ずしも多くありません。社員が以前に増して共感を求めています。withコロナ時代を大量離職からリテンションの時代にするため、会社はトップから共感型リーダーシップを実践する必要があります。
リーダーが社員の声に耳を傾けること、定期的に社員から率直なフィードバックをもらうこと、社員一人ひとりの状況やニーズを踏まえたサポートを提供すること、これらを実行する仕組みが必要です。
また、社員の能力開発を促進し、積極的に昇進や重要ポストへの任用を行うことで、社員に期待し、信頼していることを示すことができます。
確立された手法にこだわるのではなく、新時代に合わせた柔軟な対応と改革が求められています。
2.社員一人ひとりと心理的な契約を結ぶ
米国では約3分の1の社員が転職先を決めないまま退職を考えています。
コロナ禍での生活は働く人と会社とのパワーバランスを変化させました。これからの社員は物理的な成果や金銭以上に柔軟性、幅広い価値や貢献、つまり、その仕事が本当にハイブリッドであるかどうかを基準に、会社や仕事を評価するようになります。例えば以下のような基準です。
・リーダーは本当にチームを大切に思い、社員が社会に貢献できるようにしているか?
・意思決定は公正かつ透明に行われているか?
・新しい役割に挑戦し、新しいスキルを身につけるチャンスはあるか?
・会社は、社員自身や社員の能力・コミットメント・可能性を本当に信じ、活躍の場を与えてくれるか?
社員一人ひとりとのつながり、社員一人ひとりが求める成長と柔軟性を重視した組織文化、キャリア、仕組みを作ることができない会社は今後生き残ることができないでしょう。
3.組織に信頼を浸透させる
多くの会社で信頼が不十分でした。マネジャーは意思決定の責任と権限を感じられずにいました。信頼に基づく会社を作りたいのであれば、権限委譲を会社全体に目に見える形で浸透させてください。マネジメントチームは意思決定の権限を持っているでしょうか、官僚主義で身動きがとれない状態でしょうか。
マネジャーは意欲を引き出し、問題を解決し、チャンスを見出し、社員が自分と仕事に満足できるようになるために存在します。会社と組織文化を変えるためには、マネジャーにビジネスを運営する権限を与え、稟議やエスカレーションを減らすべきです。彼らにビジネスのビジョンと戦略に対する明確な目的とミッションを示してください。信頼と権限委譲が浸透した会社であるとすぐに受け止められるようになります。
4.帰属意識を高める
私たちは仕事で利益を創出するだけでなく、それ以上に大きな影響を与えたいと願うようになりました。サステナビリティとインクルージョンは、企業が良い評判を得るために欠かせないものとなりました。
多様性のあるチームがより大きな成果を上げることは、研究により明らかにされています。帰属意識の醸成が重要性を増す中、多様性と価値観の一致をバランスさせることは会社にとって極めて重要です。
社員は経営者に公正さ、プロセスと意思決定の客観性をますます求めるようになります。経営者が部門や役割を超えて個人やチームの貢献を認め感謝の気持ちを伝えることは、会社の目的とミッションを可視化し社員の帰属意識を高めるための効果的な方法です。
5.楽しむ
人生は真剣に取り組まざるを得ないタスクの連続ですが、楽しみも必要なことを忘れてはいけません。社員が自分らしくいられるように、社会的なつながりを実感できる時間を持てるようにしましょう。旅の道中で出会った人との笑い、楽しみは、ゴールの達成感よりも記憶に残ることが多いのです。
まとめ
パーソナリティはかなり安定しているものの、人生の大きな出来事によって変化することが研究で明らかになっています。この2年間、世界は新型コロナウイルスのパンデミックによる集団的トラウマを経験しました。
SHLの研究チームがこの期間中にパーソナリティ検査OPQを使って実施した「コロナ禍がパーソナリティに与える影響に関する調査」の結果、コロナ禍の前後では能力得点が低下していることがわかりました。「適応力」と「回復力」の平均点はそれぞれ5%と8%低下しており、コロナ禍では適応力や回復力を発揮することが難しいことが示唆されました。
さらにコロナ禍はダイバーシティ・インクルージョンや大量退職などの社会問題を引き起こし、リーダーは社員の癒しと活性化のために行動変容が求められています。共感を示すこと、社員と心理的な契約を結ぶこと、組織に信頼を浸透させること、社員の帰属意識を高めること、そして最後に、社員がプロセスを楽しむ時間を見つけられるようにすることです。
終わりに
大きな環境変化は大きな成長の機会でもあります。この2年間のコロナ禍を単なる苦難ととらえるのではなく、新しい価値や幸せを認識するための機会ととらえれば、新しい時代に適応する強くしなやかな会社を作るための多くのヒントを得ることができるでしょう。
本コラムではコロナ禍が能力やパーソナリティに与えた影響とその対策について述べました。
調査や方法に関するより詳細な情報は、SHLグループのWhite Paper 「How the Pandemic Changed Our Adaptability and Resilience」に掲載されています。
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