タレントマネジメントシンポジウム「ポテンシャル重視の人材活用」
タレントマネジメントシンポジウム
「ポテンシャル重視の人材活用」
2017年 3月 2日(木)開催
一橋大学 一橋講堂 (東京都千代田区一ツ橋2-1-2 学術総合センター2階)
2017年3月2日、弊社主催のタレントマネジメント・シンポジウム「ポテンシャル重視の人材活用」が東京・一橋講堂にて開催されました。ご参加くださった人事ご担当者は119社159名。市場のグローバル化が進み、ビジネス環境の変化のスピードがますます加速する中、新しい戦略を担える人材の発掘と育成に各社大きな関心を寄せていることがうかがえます。※ 社名・部署名・役職等はシンポジウム当時のものです。
開催レポート
パネルディスカッションには2名のパネリストにご登壇いただきました。まず、それぞれの取り組みについてお話しいただいた後、モバイル端末によるアンケートシステムを使って会場の皆様からいただいた質問に回答する形で進められました。以下、各パネリストがお話しくださった内容の趣旨を簡単にご紹介します。
戸村 玲子 様
(MSD株式会社 人事部門 タレントマネジメントグループ ディレクター)
当社はアメリカの製薬会社メルクの日本法人で、2010年万有製薬とシェリングプラウが統合して誕生しました。シェリングプラウは元々外資系でしたが、万有製薬は日本企業であったため、急にアメリカ企業になり、経営幹部に求められる要件が全く変わりました。その中でも特に大きかったのが、英語と多国籍な環境で活躍できる能力でした。そのような変化の中で、次世代リーダー候補を早期に発掘し、育成するプログラムとして 作 ら れ た の が Japan Leadership Program(JLP)です。JLPは、社内外から、「近い将来、経営を担うことのできる トップクラスのリーダーとしてのポテンシャルを持つ人材」を選抜し、10年かけて経験する業務を3年間に凝縮して育成を加速することをねらいとしています。
本日はその将来のリーダー候補を発掘して育成するプログラム、Japan Leadership Program (JLP)の取り組みについてお話します。このプログラムは2011年から始まった日本独自のプログラムです。3年で10年分の経験を積ませることを目標に、1年毎に3つのアサイメントを与えます。JLPの特徴は、①厳格な採用プロセス、②部門をまたいだ戦略的ストレッチアサイメント、③役員の強いコミットメント、です。
①について、外部採用と合わせて、既にMSDに在籍している社員に対しては、春に募集し、夏から秋に選考します。選考プロセスは、論理思考のテストとリーダーシップアセスメントによるポテンシャル評価、役員へのプレゼンテーション、社長/人事部長による最終面接を経て、最終的に決定します。外部及び内部からJLPに合格した社員は、アサイメントマッチングのプロセスに移ります。アサイメントを各部門から提出してもらい、プログラムオフィスがマッチングのサポートを行います。
アサイメントがスタートした後は、JLPとプログラムオフィス、アサイメントマネジャーと事務局がそれぞれ四半期ごとに、アサイメントの状況や本人の成長度合いを確認します。アサイメントの他にイベントとしてトレーニングや幹部とのラウンドテーブルなどを行います。JLPを始めて7年になりますが、これまでの応募者数は500人以上、うち約20名強がJLPとして在籍または卒業しています。去年は、内部から多数の応募があり最終的に合格したのは若干名でした。なお、内部からの募集は本人の立候補です。
JLPの一番の特徴は③役員のコミットメントが非常に強いことです。こういうリーダーシッププログラムの場合、一般的にプログラム生の所属はプログラムオフィス(そしてそのプログラムオフィスが人事部門に所属することが多い)ですが、当社では役員の直下に配属されます。いわば実家のお父さんとお母さんとして、対象者を下宿先(アサイメントマネジャー)に送り出します。JLP3 年間の後、たとえその人がそのまま実家に戻らなくても、自部門ではなく「MSDの人材」としてみんなで育てる文化があります。
今後の課題のひとつは、合格者のプロファイル・レベルの多様化や内部からの応募者のパイプライン育成です。また、JLP卒業後のキャリア開発も課題となっています。
上ノ山 信宏 様
(株式会社みずほフィナンシャルグループ グローバル人事業務部 副部長)
当社は金融持ち株会社であり、その傘下で銀行、証券、信託、ア セットマネジメント等の事業を展開しています。本日はその中でも銀行にフォーカスしてお話しします。古典的な銀行経営は、実質的に単一事業ポートフォリオであったため、全員が同じ業務に従事 し、同じように特徴のないジェネラリストとして育成されてきました。また金融規制の下、安全且つ安定した社会の公器としての役割を専ら期待され、新たなビジネスを創出するといったようなことが求められることはありませんでした。そうした環境下における人事運営は、入社年次によって厳格に管理され、同期入社内の相対評価で選抜を繰り返していくというシステムです。結果、根付いてしまったのが、失敗を恐れチャレンジしないカルチャーでした。大過なく過ごすことが一番、一度× がついたらどんなに努力しても報われない。テレビドラマ「半沢直樹」で描かれていた世界は、大げさではありますが、あながちフィクションであるとも言い切れない部分もあります。しかし、政治や経済、社会、テクノロジーは大きな変化を遂げています。このままで、お客さまに真に必要とされるサービスを提供し続けることができるのか、グローバルな競争環境の中で世界の金融機関と伍して戦っていけるのか、また社員の能力を充分に引き出せていないのではないか等といった強い危機感を持ちました。これが、人事運営を抜本的に変え、カルチャーそのものを変革しなければならないと決断するに至った背景です。
人事運営の抜本的改革として、6つの重点戦略を立てました。その基本的な考え方については、「<みずほ>の人事の基本ポリシー」としてホームページにも公表しました。特に本日のテーマに関連するものは「(1)多様な人材の活躍に向けた「個」を尊重する人事運営」と「(2)強い経営リーダーの育成」です。
(1)はポテンシャル重視の育成型人事運営の実践です。資質に着目し、各自の持ち味を生かし、それをどうやって強みに変えて行くのか。資質を捉えるツールとして日本エス・エイチ・エルのOPQを導入しました。
(2)の次世代経営リーダー育成プログラムは40代前半の層から候補者を選定しています。これは単なる研修に留まらず、戦略的なタフ・アサイメントを各人に課し、アセスメント・プロセスを入れて本人にフィードバックし、専門家からの個別のコーチングを実施するといった一連のものとして設計しています。今年から始めたばかりですが、候補者選定にあたっては、パフォーマンス評価や360度評価、コンピテンシー面接を通じ、能力要件の充足度を判断すると同時に、将来に亘る活躍分野を見定めながら決定しています。
今日お話した幾つかの取組は始まったばかりです。長い歴史の中で染み付いたものも含め、色々なものを一気に変えようとしていますが、悩みながら、苦しみながら前進している途上です。また、取り組んでいるのは「制度の改革」ではなく、「運営の改革」ですので、組織全体に浸透させていくのは簡単な話ではありません。今次改革の大義は何か、具体的に何をしていくのか等、現場とは丁寧にコミュニケーションを繰り返しながら、あるべき姿の実現に向けて取り組んでいます。
プログラム
13:30
開会
13:45
講演「ハイポテンシャル人材の見分け方」
清田 茂(日本エス・エイチ・エル株式会社 取締役)
14:20
サービス紹介 「SHLグループオンラインテスト商品紹介」
村井 泰裕(日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルティング2課課長)
14:35
休憩
14:50
パネルディスカッション 「ポテンシャル重視の人材活用 各社の事例」
【パネリスト】
戸村 玲子 様(MSD株式会社 人事部門 タレントマネジメントグループ ディレクター)
上ノ山 信宏 様(株式会社みずほフィナンシャルグループ グローバル人事業務部副部長)
【モデレータ】
清田 茂(日本エス・エイチ・エル株式会社 取締役)
16:30
閉会