人事担当に聞く!タレントマネジメントの実際
様々な人事課題に対して、なぜ、なにを、どのように行ったのか、
人事担当者にお話しを伺いました。
キャリアプランに基づき育成ステップを可視化した、
みずほリースの教育研修制度。
新入社員から部店長までを網羅するキャリアプランと、各ステップで求められる到達レベルに沿った
教育研修体系を構築しているみずほリースの事例を紹介します。※本取材は2021年1月に行いました。インタビュー内容は取材時のものです。
横山幹彦 様
みずほリース株式会社
人事部 副部長
みずほリース株式会社
事業内容 | : | リースを中心とする法人向け総合金融サービス |
業種 | : | 金融業 |
従業員数 | : | 連結:1,804名、単体:735名 (2020年9月末現在) |
インタビューの要約
新入社員から部店長レベルまで、職系と経験年数・ステップごとに到達すべき行動レベルや知識/スキル、受講研修を紐づけた「キャリアプラン」を構築し、教育研修制度を整備・拡充した。
日本エス・エイチ・エルの担当する「ヒューマンアセスメント研修」は、管理職準備グレードが対象の研修。ロールプレイなどの演習によるアセスメントとフィードバックで、管理職となる上で求められる能力を認識することが目的。
今後強化していきたいことは、育成を主眼とした戦略的ジョブローテーションと、「3C(challenge、change、create)」の一層の推進。
このインタビューのテーマ
新入社員から部店長までのキャリアプランを明示し、
教育研修制度の刷新に取り組む。
私が人事部に異動して、4年が経過しようとしています。着任してからは労務以外の人事領域に幅広く関わっています。
配属された当初、階層や職系で研修頻度に偏りがあるのが気になったことから、教育研修制度を大幅に見直すことにしました。まず、職系と経験年数に応じて求められるスキルとそのレベルを定義して、明確なキャリアプランを作りました。具体的には、新入社員から部店長レベルまで、職系とステップごとに到達すべき行動、経験、知識/スキル、受講すべき研修を明文化しました。このキャリアプランを作ったことで研修頻度の偏りが是正されました。拡充した主な研修としては、例えば、営業職のソリューション力を強化するために、仮説構築力、発想力、プレゼンテーション能力を鍛える営業系の研修、総合職と比べて手薄となっていた中堅業務職に対する研修などがあります。
このキャリアプランは社内のポータルサイトに掲示されており、社員が全体感を把握したり、求められる到達レベルを目指して自己研鑽したりするのに活用されています。
管理職準備グレードが受講する「ヒューマンアセスメント研修」。
日本エス・エイチ・エルに委託している「ヒューマンアセスメント研修」は、管理職準備グレードに昇格した社員が対象です。この研修の目的は、受講者がリーダーシップや課題解決、企画立案など、管理職となった際に求められる能力の現在のレベルを知り、能力開発目標を定めることです。受講者は、ファクトファインディング演習(情報収集を通して真実を見抜き、課題解決をする演習)や、部下との対話のロールプレイ演習、プレゼンテーションの演習などを行った後、自身の今の能力や特徴について、日本エス・エイチ・エルのアセッサーから個別にフィードバックを受けます。
昇格者はプレーヤーとして実績を残してきた社員です。今後は、自分だけでなく周囲を巻き込んで組織を成長させていく意識を持ってもらい、今後求められる能力、今の状態とのギャップ、自分の管理職としての強みや弱みを考えてもらう機会にしています。アセスメントを、自分で認識している自分と他者から見た自分との違いを知り、あるべき姿とのギャップを認識するための“きっかけ作りの場”として位置づけています。
受講者からは、「今までで一番疲れた研修だ」、「この年齢になってこんなにダメ出しされることはない」といったコメントが多く寄せられます。日常の業務で弱点を直接指摘されることは少ないので、この体験を成長の糧にしてもらいたいと思っています。また、「自分では手ごたえのあった課題で弱みを指摘され、改善すべき点を把握できた」「自分でも認識していない強みや弱みを知ることができた」などの前向きな声も少なからずあり、“気づき”を得ている実感があります。アセスメント結果は上司である部店長にも共有されますが、「弱みが丁寧に解説されているので、今後の育成に役立てたい」などの所見が寄せられています。
育成の今後の課題はジョブローテーション。
個人と組織の両面から「戦略的人事」を進めたい。
人材育成に関して完璧はありません。今後は、社員一人一人の能力、資質、職務経験、キャリアビジョンを踏まえた育成のため、戦略的なジョブローテーションを一層推進していく必要があると考えています。また、個人の能力開発だけでなく、疲弊しているチームがあれば、新しい人材を投入することで活性化させることも重要です。現場の事情や需給バランスなどが障壁となり、ジョブローテーションが社員や組織にとってベストではないケースもあると思います。タレントマネジメントシステムのリリースも間近に控えており、情報の一元化により、より戦略的な人事を行うための体制を整えていきたいと考えています。
みずほリースの「大転換期」に今後取り組みたいこと。
2019年、みずほ銀行が出資比率を大きく引き上げ、旧興銀リースからみずほリースに商号を変えて、名実ともにみずほ系中核リース会社となりました。大きな転換期を迎えています。このことでビジネスチャンスが格段に拡がり、即戦力としてのキャリア採用を大幅に増やしています。
旧興銀リースを象徴する形容詞は「堅実」でした。安定している時代なら大きな強みですが、足元の環境は決してそうではありません。現在、challenge、change、createの「3C」を会社の行動指針にしています。変化するため、新しいものを生み出すための起点となるのはチャレンジだと考え、特に重要視しています。
採用に当たっては、「自律」と「多様性」を重視しています。新人と中途入社社員が現場に刺激を与えることで、チャレンジの推進・浸透が加速していくことを期待しています。
また、会社全体としてチャレンジを推進していますが、管理職の中には大きなチャレンジをするのにまだ慣れていない社員もいると思います。ミドルマネジメントの意識や行動を変えていく為には、心理的安全性の確保も欠かせないと思います。
課題は単純ではなくリンクしているので、関われる業務領域が幅広いのはありがたいことです。人事でチャレンジしたいことはまだ沢山ありますね。
私にとって、日本エス・エイチ・エルは「プロ集団」というイメージです。アカデミックで、自社のポリシーがあって、良い意味で迎合しない、プロ意識の高い集団という感じでしょうか。先述の通り、みずほリースはまさに変革のタイミングです。あまり範囲を限定せず、人事領域全般について総合的なお話をしていければと考えています。
担当コンサルタントから
畔取祐介
日本エス・エイチ・エル株式会社 HRコンサルタント
関連リンク