コラム

人事コンサルタントの視点

360度評価「無尽蔵」

はじめに

コンピテンシーの360度評価は1990年代から存在するアセスメント手法です。管理職の評価育成方法として長年活用されており、多くの効用がある一方で運用を誤ると副作用が生じることがあり、活用には注意が必要です。近年、人的資本経営のための人材データ収集方法として改めて360度評価に注目が集まっています。
本コラムでは、当社の360度評価ツール「無尽蔵」について紹介します。

360度評価とは

360度評価は一人の被評価者に対して、周囲の複数人が能力を評価する仕組みです。1990年代にコンピテンシーアセスメントの手法として普及しました。コンピテンシーは能力が行動として顕在化したものですので、他者から評価しやすくこのツールとの相性がよかったのです。
主な利用目的は能力開発です。評価、選抜にも使うことも可能ですが、綿密な計画と適切な開発、細心の注意を払った運用が求められます。
メリットは複数の他者から評価を受けられること。自分ではできていると思っている行動が周囲からはできていないと見られていることがわかり、問題の原因究明や効果的な能力開発計画の立案ができます。デメリットは評価スキルが弱い評価者による偏った評価となることです。偏った評価は、誤った人事判断を導くだけでなく、被評価者と評価者との関係を悪化させることにつながり、チームをバラバラにしてしまうこともあります。

360度評価「無尽蔵」

360度評価「無尽蔵」は当社が2001年にリリースされたオンラインの360度評価ツールです。英国SHL社の「Perspectives on Management Competencies (PMC)」をベースに、より効果的な能力開発ができるよう日本独自の機能を搭載し、世界のSHLに先駆けてオンラインツールとして販売をはじめました。

360度評価「無尽蔵」の概要
  • 測定項目:マネジメントコンピテンシー36項目
  • 評価者:本人、上司、部下、その他 (上司1名、部下とその他18名まで)
  • 質問:重要度認識36問20分(本人と上司が回答)、能力評価36問20分(全員が回答)
  • レポート内容:重要度認識、能力レベル評価、能力開発課題、能力開発マニュアル

「無尽蔵」の特徴

「無尽蔵」には能力開発に効果的な三つの特徴があります。
  • イプサティブ(強制選択)の質問形式
  • 本人と上司のコンピテンシー重要度評価
  • コンピテンシー別の能力開発マニュアル


  • まずは、イプサティブの質問形式についてです。
    360度評価のデメリットは評価の偏りであることは申し上げた通りです。好きな人には「あばたもえくぼ」、嫌いな人には「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」となるのが人情というもの。評価者訓練を受けている管理職でもこうなるのですから、いわんや非管理職をや。 この問題を解決するため「無尽蔵」では、評価者は四つのコンピテンシー行動から被評価者に最もよく見られる行動と最も見かけない行動をそれぞれ一つずつ選びます。

    この質問形式は、自己評価における自信過剰や自己卑下、評価者の被評価者への配慮や人気投票などの偏りを抑える効果があり、被評価者本人が結果を受けとめやすくなります。本人が結果を受け入れることはフィードバックによる能力開発において最重要事項です。

    次は本人と上司のコンピテンシー重要度評価についてです。
    ジェネラリストである管理職の職務は複雑であり、仕事をしている管理職本人とその上司との間で重要視する行動が異なるケースはよくあります。成果に対する認識は一致していても、それを達成するための行動やプロセスは人それぞれです。本人と上司の役割期待に対する乖離を埋める手段として「無尽蔵」は両者の重要度評価を比較する機能を持っています。注目すべきは得点差が見られる項目です。得点差についての対話が相互理解を深め、両者の方向性を一致させることに役立ちます。方向性を一致させるだけでパフォーマンスが改善される場合もあります。

    最後にコンピテンシー別能力開発マニュアルについてです。
    アセスメントは人間ドックに似ています。人間ドックでは検査結果から生活習慣病の兆候を見つけ、その問題解決するための生活習慣改善計画を立案し、実行します。中性脂肪の低減であれば食事と運動の改善、肝臓の値であれば飲酒量を減らすなどの計画を保健師さんとの面談で作成します。「無尽蔵」も専門のフィードバッカーとの面談で同様のことができるのですが、フィードバッカーがいない場合でも能力開発マニュアルにしたがって自ら能力開発計画を作ることができます。
    能力開発マニュアルは36項目のコンピテンシーについて、能力項目の定義、高得点者/低得点者それぞれの実用的な側面と役に立たない側面、理解促進の為の自己点検質問、能力獲得の為の具体的な開発方法が記載されています。

    <能力開発マニュアル例:指揮>
    ・定義
    誰もがわかる形で方針を示す。責任を引き受け、目標を達成するために、計画を決め、全体の舵取りをする。

    ・理解促進の為の自己点検質問(一部抜粋)
    「あなたが今までで一番チームをうまく指揮したのはどんな時でしたか?その時意識して努力したことは何ですか? 」
    「あなたが今までで一番チームをうまく指揮できなかったのはどんな時でしたか?それがうまくいかなかった原因は何だと思いますか? 」
    「よりうまく指揮するにはどうすればいいと思いますか?」

    ・能力獲得の為の具体的な開発方法(一部抜粋)
    このコンピテンシーは優れたチェックリストをもち、そのとおりに実際にやっていくことで獲得できます。獲得の鍵はチェックリストの優秀性にあります。以下、指揮というコンピテンシーの定義に則って、チェックリストを用意しました。その前提となるコンピテンシーの有無を示す行動傾向とあわせて示します。

    1.今までの自分のリーダーシップについて自己評価してみる
    「高得点者の実用的な側面」と「低得点者の役に立たない側面」の行動リストを参考にしながら、今までの自分のリーダーシップについて考えてみましょう。
    □ 進んでチームやグループの責任を負おうとしていましたか。
    □ チーム目標や仕事の方針についてメンバー全員がわかるように伝えていましたか。
    □ 目標が達成されるよう進捗管理を行い、チームの舵取りをしていましたか。
    □ グループをまとめるのに自分がどれくらい貢献しましたか。
    □ どのようにすればもっとうまくやれたと思いますか。

    まとめ

    360度評価「無尽蔵」は以下のニーズに対応できます。

清田 茂

このコラムの担当者

清田 茂

日本エス・エイチ・エル株式会社 執行役員

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