コラム

人事コンサルタントの視点

リモートワーク下のストレスとストレスコーピング

公開日:2021/10/22

コロナ禍、私たちの世界は大きく変わりました。「ニューノーマル」と呼ばれる新しい生活様式により、仕事の仕方も急速な変革を遂げました。リモートワークやオンラインミーティングは社会に浸透したといえます。生産性の向上が明らかになる一方、燃え尽き症候群(バーンアウト)の可能性を高めるという指摘もあります。
今回は、リモートワーク下のストレスと、パーソナリティ検査OPQからも予測できるストレス対処法についてご紹介します。
※それまで意欲を持ってひとつのことに没頭していた人が、あたかも燃え尽きたかのように意欲をなくし、社会的に適応できなくなってしまう状態のことをいいます(厚生労働省)


リモートワーク下のストレス

COVID-19が登場した当初から、多くの人々がストレスや不安の増大を訴えていました。2020年は、記録的に「最もストレスの多い年」とも言われています。労働者がこれまでのすべての出来事で精神的に疲弊していることから、メンタルヘルスは職場で取り組むべき緊急課題の一つとなっています。リモートワークにおいてストレスや不安が高まる主な要因は次の4つです。
※SHLグループのコラム参照

1.切断できない
在宅勤務の主な危険性は、オフィスと生活の場が同じであるため、精神的に仕事から切り離すことができない点です。企業が急速にリモートワークに切り替えた際、通勤がなくなり、身支度も簡易的にすみ、仕事の合間には家事など仕事以外の活動ができるとは素晴らしい!と多くの人が思ったことでしょう。しかし、気づけば通勤する代わりに朝起きてすぐに仕事のメールをチェックし、休憩する代わりにデスクでランチを食べ、プライベートな時間を楽しむ代わりに夜遅くまで仕事をしていることが多いのです。私たちは無意識のうちに、PCの電源を切るだけで、仕事からプライベートへの切り替えは容易だと思っていました。ですが、このアクセスのしやすさと自由さが裏目に出て、仕事と家庭の境界が曖昧になってしまうことがあるのです。

2.仕事と家庭がアンバランス
先に述べたとおり、私たちの仕事と家庭は物理的にも心理的にも融合しています。このことでかえって、プライベートと仕事の両立が難しくなっています。家庭で子供の世話をしている人は、これまで以上にワークライフバランスが悪くなり、子育てが余計に大変になります。

3.気をそらすものが多すぎる
仕事の合間に洗濯ができるのは効率的に見えますが、実は気が散ることにもつながります。気が散ることは必ずしも悪いことではありません。むしろ、作業の合間にちょっとした休憩を取ることで、気分転換にもなります。しかし、1時間おきにペットの世話をしたり、子供が話しかけてきたり、たびたびインターフォンが鳴って荷物が届いたり、一見いいことのように見えても、生産性を低下させる原因になります。ちょっとしたことで頻繁に中断されると、集中力が低下し、結局、タスクをこなすのに時間がかかったり、最悪の場合、やりがいのある仕事を後回しにしたりすることになります。

4.支援してくれる環境がない
一人で仕事をするのが好きな人もいれば、人に囲まれて仕事をするのが好きな人もいます。自宅で仕事をするということは、他の同僚と物理的に隔離されるということであり、コーヒーを片手にした雑談や、質問があるときに気軽に同僚のデスクに立ち寄ることもできません。

ストレスコーピングとOPQが予測できるストレス対処法

このような環境下で、仕事や職場におけるストレスをどのように対処していくか。メールなりチャットなりで同僚に相談する、気晴らしに運動する、好きな音楽を聴く、など人によってその方法は様々あるでしょう。心理学者のリチャード・ラザラスはストレスコーピングにおいて有益な2つの違いを指摘しています。1つは、問題そのものに対してぶつかってゆこうとする「問題焦点型」対処法であり、もう1つは自分の心の平静さを維持しようとする「情動焦点型」対処法です。
研究によれば、人はストレスを引き起こす場面に出会うと、決して単純なかたちではそれに対処せず、必ず複数の戦術を組みあわせようとします。このときに、個人の、事態を評価する仕方の差ととりうる手段として思いつく案の差によって、その戦術が規定されます。つまり、パーソナリティの差異がその「選択」行動に反映されるのです。今回ご紹介する「ストレス対処法」は、パーソナリティ検査OPQのプロファイルからその人の「得意とするストレス対処法」を予測することが可能です。

【ストレス対処法】
勇気をもって立ち向かう
逆境に立ったときに、勇気を奮い起こして、問題そのものに取り組む。直接、相手の考えに対決して、その考えを変えさせようとする。

距離をおいて見る
今いる状況から自分を離して眺める。物事の明るい楽観的な面に目を向けるように努力する。

冷静に自分を保つ
自分の感情や行動を抑えて、表に出さない。不当な批判を浴びたような場合であっても冷静に自分を保ち取り乱さない。

胸襟を開いて助力を求める
自分だけで問題を抱え込まないで、人に率直に話して援助を求めたり、アドバイスや共感を勝ち取る。

責任を認める
問題に対して自分の責任を認めて、逃げない。それによって物事を打開したり、同じ間違いや問題を繰り返さないように決意する。

他のことに目を向ける
つらい状況や嫌な問題にいつまでも悩まない。楽しいことや自分の好きなことに目を向けようと努力する。

着想豊かな解決案をつくる
よく問題を見極め、問題そのものを解決する案を工夫して打開する。その解決案を実行するために自分ができる努力を増やす。

プラス思考で打開する
人間的に成長する、変貌することの利益に注目して、努力する。危機をチャンスと見て前向きに努力する。

おわりに

コロナ禍で私たちは予期しないストレスを様々に受けています。ご紹介したストレス対処法は、仕事でのストレスに限らず、様々なストレスや不安に対応するヒントを与えてくれています。
先述の通り、これらの対処法は個人の認識や行動によって選択しやすさに差が生じます。ご自身のとりがちな対処法を認識するとともに、普段あまり目を向けない手段を選択肢として取り入れることで、少しでもストレスや不安が和らぐ可能性があります。パーソナリティ検査OPQでは、ストレス耐性リポートの出力により、個人の得意なストレス対処法の予測ができますので、ご自身や部下のストレスマネジメントにお役立ていただければ幸いです。

水上 加奈子

このコラムの担当者

水上 加奈子

日本エス・エイチ・エル株式会社
マーケティング課 課長

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