コラム

人事コンサルタントの視点

女性の活躍を後押しする5つのヒント

公開日:2021/09/28

はじめに

女性活躍を推進がなかなかうまくいかない現状やその一因となる昇進意欲の問題について、コラムでは取り上げてきました。今回は、SHLグループで掲載されたコラムを元に女性活躍を進めるための5つのヒントをご紹介します。

平等な未来を実現する

 国連が定める国際女性デーの今年のテーマは、「リーダーシップを発揮する女性:COVID-19の世界で平等な未来を実現する」でした。活力を与える素晴らしいテーマではありますが、何十年もこの未来に向かって取り組んできたものの、現実にはまだまだほど遠い状態です。さらに、女性にとってパンデミックは大きな後退をもたらしました。たとえば米国では女性だけが失業した月があった、あるいは白人男性と比較して非白人女性の失業率はほぼ2倍となるといったことが起こっていました。

女性リーダーは収益に影響を与える

 過去のコラムでも取り上げていますが、女性リーダーは経済的なメリットをもたらします。マッキンゼーが発表した「職場における女性」に関するレポートによると、女性がエグゼクティブレベルの職務に就いている場合、企業の利益率は50%高くなります。しかし、世界の経営層の21%、上級管理職の28%しか女性は占めていません。同様に、United Nations Policy Brief on COVID-19 and Women in Leadership(COVID-19とリーダーシップにおける女性)では、女性がリーダーとなっている国はCOVID-19による死亡率が最も低く、ウイルスの封じ込め対策も最も効果的であるにもかかわらず、世界の統治者に占める女性の割合は25%に満たないと指摘しています。女性がリーダーシップを発揮することで、ビジネス、経済、コミュニティに多大な恩恵がもたらされることは、数え切れないほどの事例からも明らかです。多くの研究がこの点を証明しているにもかかわらず、女性は大きな抵抗を経験し続け、今ではパンデミックによる後退をも経験しています。

女性の活躍を後押しする5つのヒント

組織において女性の活躍を後押しする5つのヒントをご紹介します。

1. 女性の能力を信じ、昇格させる
 マッキンゼーの研究によれば、女性は男性と比較して、上位職を維持するために2倍の努力と高い教育を受けなければいけないことが多く、常に自分の能力を証明し続けなければなりません。これは、女性は男性よりも能力的に劣るという(意識的あるいは無意識的な)偏見に起因します。しかし、何十年にもわたる研究で、女性も同等に能力があり、リーダーシップの課題によっては男性よりもうまく対処することもあることが示されています(参照コラム:リーダーシップ・ダイバーシティ:女性リーダーが活躍するコンテクスト)。彼女たちの成功を後押しするには、文化的な意識の変容が必要です。具体的には、指導的立場にいる男性に自身の個人的なバイアスを振り返ってもらうのです。
リーダーに関する配置の意思決定者のほとんどが男性です。「女性に能力がある」という事実の信頼性を高めるためにも、この意思決定者が女性の同僚・スタッフを信頼するという自覚とアライシップ*を持つことがとても重要です。

*アライシップ(allyship)とは、自分自身が属していない特定のグループに対して、彼らの基本的な権利や、社会で幸せに成功する能力を確保するために、味方(=誰かを助け、サポートする人)になる状態。

2. 柔軟な仕事環境を提供する
 パワフルに多くの責任を同時にこなす女性も多いですが、ほとんどの場合、仕事の要求よりも家族の義務を優先せざるを得ません。したがって、子供やほかの扶養者の時間制限のある差し迫った要望に応えるか、フルタイムの仕事を行うかのいずれかを選べと言われれば、個人的な時間や幸せの代わりに家族を選び、仕事をそれに合わせていくでしょう。
 より柔軟に働く環境を職場が提供すれば、このコロナ禍でも女性スタッフのリテンションが高められます。マネジャーやリーダーは「労働時間」ではなく「生み出された成果」にフォーカスすべきです。従業員に家族の面倒をみるフレキシビリティを提供するとともに、この「成果」に集中することで、組織が成長していけるでしょう。

3. 家庭で平等なパートナーシップを築く
 ここ数十年の間に、男女が家庭内でより対等なパートナーシップを築くようになり、文化的に大きな変化があったことは確かです。これは喜ばしいことではありますが、パンデミックによってもたらされた経済格差からも明らかなように、まだまだやるべきことがあります。様々な国の研究で、働く女性が依然として不均衡な量の家事や育児を担い続けていることが示されています。今こそ、パートナーが参加し、家庭でのパートナーシップを深めるときです。交代で、夕食を作り、掃除をし、あるいは子供の宿題に付き合ってください。女性の家庭でのプレッシャーを軽減させることは、女性のキャリアに余裕を生みます。これは全員にとって有益です。

4. 女性の励みになるようなコミュニティを作る
 今は、これまで以上に、女性が職場で互いに支え合い、高め合うべき時であり、機会でもあります。ビジネス場面でも、女性同士で意見やアイデアを聞くことができる空間を作りましょう。お互いに励まし合いながら前へ進み、負担が重すぎたり組織文化が十分に進んでいないと感じたときには、思いやりをもって傾聴することができます。自分より年下の女性にメンターを申し出たり、会社で力のある立場の女性にメンターを求めたりしましょう。協力し合うことで力を発揮します。

5. 人材戦略の中に女性を組み込む
 つまるところ、パンデミックがもたらす課題や機会に対応できる人材戦略を立案する際には、女性活用を念頭に考えるべきだということです。社員の適性配置に公平なツールを使用することで、以前は考えられなかったような候補者に道を開くことができます。SHLが持つ様々なソリューションは、現状のスキルセットだけでなく、未来のポテンシャルも含めた組織全体の人々のインサイトを提供します。この前向きな考え方は、多様で包括的なリーダー人材を育成する大きな鍵となります。

終わりに

「女性の活躍推進」という言葉は、単に女性自身が努力し邁進するためだけに使われるべきではありません。文中にご紹介した「アライシップ」という言葉が表すように、「女性の活躍推進」には男性の支援や努力が不可欠です。ジェンダーダイバーシティに限らず、様々な種類の多様性を支える際も同様のことが言えます。立場に関わらず、組織や家庭を担う主体者として、このコラムが自身の意識や行動を前向きに振り返るヒントになれば幸いです。
水上 加奈子

このコラムの担当者

水上 加奈子

日本エス・エイチ・エル株式会社
マーケティング課 課長

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